化学合成siRNA
siRNA(small interfering RNA)とは、21~23塩基対からなる低分子二本鎖RNAです。siRNAはRNAiと呼ばれる現象に関与しており、mRNAの切断によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制します。細胞内に導入されたsiRNAは、二本鎖のうちの一本鎖(アンチセンス鎖)がRISC(RNA induced silencing complex)とよばれる複合体に取り込まれます。RISCは取り込んだRNAと相補的な配列をもつmRNAを特異的に捕捉切断し、ターゲット遺伝子の発現抑制を引き起こします。siRNAによる遺伝子発現抑制技術は、その高い特異性と簡便性から、遺伝子機能解析の一般的な手法として広く使われています。
特長
ノックダウン効率と特異性の高いsiRNA
Horizonは、強力なサイレンシングのためのsiRNAデザインルールを確立し、この分野における革新を推進し続けました。SMARTselectionアルゴリズムは、当社のすべてのデザイン済み製品に対して高機能かつ特異的なsiRNAを選択します 。
実験計画に合う複数の製品フォーマット
siRNAをプールして使用することは天然のRNAi経路をよりよく模倣し、SMARTselectionデザインと組み合わせるとサイレンシング効力と特異性の両方に利点があります。
- 一度に4つのmRNA領域を標的とすることは効果的なサイレンシングの可能性を改善し、アクセスできない結合部位による偽陰性を減少させます。
- 各siRNAの相対濃度が低いほど、配列特異的なオフターゲティングが減少します。
すべてのDharmaconデザイン済みsiRNA製品は、4種類のsiRNAの混合(プール)、4種類のsiRNAのセット、1種類ごとのsiRNAとして入手可能です。
特異性を高めるためのオフターゲットの削減
siRNAによるオフターゲットの主な原因は、siRNAのseed領域(アンチセンス鎖のポジション2~7)が、mRNAの3′-UTRに対してmicroRNAと類似した相互作用をすることにあります。SMARTselection siRNAデザイン戦略には、Seed領域フィルターとSeed頻度分析が組み込まれており、microRNAのようなオフターゲット効果を低減します。Dharmacon siRNA製品は、オフターゲットを抑制するための最も包括的なバイオインフォマティック戦略を提供します。
- 保存されたmicroRNA Seed領域はsiRNAデザインから除外されます。
- Seed頻度分析により、mRNAの3‘-UTRにおけるSeed領域配列の出現頻度が低いsiRNAデザインを優先的に選択します。
実験目的に合わせて選べる4種類の製品タイプ
siGENOME、ON-TARGETplus、Accell、Lincodeから選択可能です。
製品選択ガイド
siRNA実験では、下記の試薬が必要となります。siRNA実験ではトランスフェクション条件の至適化が最も重要です。コントロール siRNAを用いて、トランスフェクション条件の検討、siRNA実験の結果の評価、およびターゲット遺伝子に対するsiRNA特異的なノックダウンの評価を行います。
- ターゲット遺伝子に対するsiRNA:実験目的に合わせて製品タイプ / 製品フォーマットを選択します。
- ポジティブコントロール / ネガティブコントロールsiRNA:ターゲット遺伝子に対するsiRNAと同じ製品タイプを選択します。
- トランスフェクション試薬(DharmaFECT 等)。Accell siRNAを用いる場合は、トランスフェクション試薬は不要であり、Accell siRNA delivery mediaのみを使用します。
ターゲットsiRNAの製品タイプの選択
あらかじめ配列がデザインされたsiRNAは、下記のsiGENOME、ON-TARGETplus、Accell 、Lincodeの4種類の製品タイプがあります。実験目的に合わせてお選びください。
siGENOME siRNA
ノックダウン効果と特異性に優れたスタンダードタイプのsiRNAです。
ON-TARGETplus siRNA
siGENOME siRNAのアップグレード版として、ON-TARGETplus修飾を導入することでオフターゲット効果をより抑え、ターゲット遺伝子に対する特異性を向上させています。
Accell siRNA
独自の化学修飾(Accell テクノロジー)により、トランスフェクション試薬を使わずに細胞へ導入できるsiRNAです。細胞への導入は、Accell siRNAを専用培地(Accell siRNA delivery media)と混ぜて細胞を培養するだけで、従来導入が難しかった細胞でもRNAi実験を可能としました。
Lincode siRNA
長鎖non-coding RNAをターゲットとするsiRNAです。
タンパク質をコードする遺伝子をターゲット |
長鎖non-coding RNAをターゲット | |||
---|---|---|---|---|
siGENOME | ON-TARGETplus | Accell | Lincode | |
生物種 | Human, Mouse, Rat | Human, Mouse, Rat | Human, Mouse, Rat | Human, Mouse |
SMARTselection siRNA
デザイン |
● | ● | ● | ● |
Seed regionフィルタ ー | ● | ● | ● | ● |
SMARTpoolテクノロジー | ● | ● | ● | ● |
Accellテクノロジー | ー | ー | ● | ー |
ON-TARGET修飾 | ●*1 | ー | ー | ー |
ON-TARGETplus修飾 | ー | ● | ●*2 | ● |
siSTABLE修飾 | ー | ー | ●*3 | ー |
*1 約20%のsiGENOME siRNAについて、センス鎖をON-TARGET修飾しています(デザインの段階でセンス鎖由来のオフターゲットの可能性が示唆された場合のみ)。
*2 Accell siRNAでは、ON-TARGETplus修飾に類似した化学修飾により特異性を高めています。
*3 Accell siRNAでは、siSTABLE修飾に類似した化学修飾によりヌクレアーゼに対する安定性を高めています。
製品フォーマットの選択
各デザイン済みsiRNAは、遺伝子1種類に対して、ノックダウン効果と特異性の高い4種類のsiRNAをデザインしています。これらのsiRNAは、4種類のプール、4種類のセット、1種類ごとの製品フォーマットにより提供しています。siRNAを使う実験の全体的な実験計画を考慮して選択します。各種フォーマットの製品を組み合わせて実験を進める例を下記に示します。